Winterbook2024
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1本のワインから溢れるグランメゾンの思い出シニアワインエキスパートとして活躍し、ミッドランドスクエアのお店とも所縁の深い柳園佐智子さん。今回はオーベルジュ・ド・リル名古屋の支配人・植田大輔さんにワインを案内いただきながら、冬の食とワインをテーマにお話をうかがいました。実は柳園さんはアルザスのオーベルジュ・ド・リルを2度訪れたことがあるのだそう。ダイニングの写真を見ると、その記憶が蘇ります。「この写真のような川があって、鳥たちが舞い降りるのどかな場所。本当に温かいもてなしを受けました」。アルザスではワイナリーも巡り、リルのワインリストにも欠かせない「ドメーヌヴァインバック」を訪ね、オーナーのカトリーヌさんに案内してもらった思い出も。支配人の植田さんも、彼女の人柄に感銘を受けたと言います。「カトリーヌさんはリルの料理を知り尽くしている人。彼女の提案でスペシャリテの真鴨料理にゲヴュルツトラミネールを合わせるようになりました。鴨一羽をスパイスと蜂蜜でマリネしてオーブンで香り甘味をつけて焼いた料理。鴨といえば赤でしたが、カトリーヌさんのゲヴュルツは糖度が高く味わいが強い。エピスなどの香りもあり、実は正攻法の組み合わせでした」。得。「スパイスや蜂蜜を感じるが、酸もありバランスがいい。ヴァインバックのワインを飲むと、アルザスの風景が目の前に浮かんでくるようです」。「グランメゾンとしてのおもてなしがこの店の使命ですが、アルザスに行きたいと思わせるお店でありたいと思っています」と、植田さんもソムリエとしての思いが溢れます。うこの組み合わせのように、ワインと料理ワインや料理を知ることでマリアージュがさらに深まる柳園さんもこのワインを一口飲んで納その土地のワインと料理を合わせるといのマリアージュに大切なのが、料理を引き立てるという視点。「田崎真也さんからレモンをかけると美味しい料理が白ワインに合うと教えてもらいましたが、料理を美味しくするためにレモンを添えるように、料理主体でワインを選ぶようにしています。ワインの余韻がある口の中で料理が完成すると考えるので〝口中調理〟という言い方をする人もいますね」。料理と寄り添い、高め合える。そのバランスが大事だと柳園さんは考えます。では具体的に料理に合うワインを選ぶ時のコツなどはあるのでしょうか。「例えばソースにトリュフが添えられた肉料理なら、トリュフと相似する茸や大地の香りがする赤ワインを。ソースが濃厚で複雑ならば熟成したワインにします。特にメインディッシュは相似する味わいを合わせるのがいいですね」。冬はほかにもフォアグラ、ジビエなど特別な食材を食べる機会が多い季節。そこに添えられているソースやスパイスに注目することが、よりよいマリアージュを愉しむ一歩になります。普段は歯科衛生士として働き、その合間にワインの仕事もしている柳園さん。忙しい中でも手料理を作るなど、家族との時間を大切にしています。ご自身はホリデーシーズンにどんなワインが飲みたくなるのでしょうか。「例えばクリスマスの香りというと何を思い浮かべますか?私はモミの木やシダなど針葉樹の香り。そして焼き菓子や冬のご馳走から漂うシナモンなどのスパイスやオレンジの香り。冬はその香りを持つワインがあるとワクワクします」。香りという刺激が、楽しい記憶や温かな思い出を一気に蘇らせてくれるのかもしれません。「夏の疲れは、暑さか仕事かよくわからないけれど冬は本当に日々に追われ疲れている。だから美味しい料理やワインを愉しむことは、自分へのご褒美、糧になります。ソムリエは私にとって幸せをそそいでくれる人。料理を運ぶ人は、幸せを運んでくれる人。特にミッドランドスクエアは館内の清潔さをはじめ、サービスも洗練されていて、気配り心配りが館内に行き渡っている。こちらに来るといつも幸せの溜息が溢れてしまいます」。最近はどんなワインでも、料理に合うワインならば全部好き、と言えるようになったという柳園さん。大切なのは誰と一緒に、どんな料理と飲むかということ。そして食べることと飲むことの組み合わせは尽きることがないので、その追求をワインと共に楽しんでほしいと語ってくださいました。Midland Square Winter Book 202420年前、1本のシャンパーニュとの出会いをきっかけにワインを学びはじめる。愛知県阿久比町「やなぎその歯科」で歯科医師の夫と共に歯科衛生士として働きながら、田崎真也氏主催のワインスクールに通い、第一回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。現在も歯科の業務を行いながら、日本ソムリエ協会の理事やワイン検定の講師を務め、ワイン検定教本の監修なども行っている。支配人でソムリエの植田さんと共に。リルの料理を知り尽くすプロフェッショナルの話に柳園さんも興味深々。「ドメーヌ ヴァインバック」「フレデリック エミール」などアルザスの名門はもちろん、12月はブルゴーニュのプルミエ・クリュなどもグラスで提供する予定。シニアワインエキスパート柳園佐智子 Sachiko Yanagisono21Interviewee

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