— 専業主婦からパーソナルスタイリストになった経緯をお聞かせください。

 22歳からファッションモデルをしていましたが、27歳の時にモデル事務所を辞めて、名古屋市内のインポートのセレクトブティックに転職して、販売のほかバイヤーとして毎年パリへ買い付けに行っていたのです。
 当時はセレクトブティックがまだ少なかった時代。そのセレクトブティックが高級住宅街にあったこともあり、お客様はいい家柄の方ばかりでした。私が担当していたのは40代後半から50代のマダムで、みなさんなぜだか自分に自信がなくて、若い頃に戻りたいと思う方ばかりでした。お嬢さんと姉妹に見えるようなファッションでお買い物に出かけたり…。
 一方、パリの展示会やコレクション会場でお会いする50代のメーカーの女性たちは、自立していて、いまを楽しんでいて…。とても輝いて見えたんですね。
 海外出張から戻ると、日本の女性はどうしてこんなに自己肯定感が低いのかなと、どうしたら女性を素敵にできるのかな?と、頭の片隅で考えていました。
 その後、30歳で結婚し、家庭に入り子育てをしていたのですが、私が42歳、娘が3歳の時に、パーソナルスタイリストの活動を追うドキュメンタリー番組を見て、「人を幸せに変える仕事って素晴らしい!」と思い、この道へ入りました。

— どんなアプローチでスタイリングを学ばれたのですか?

 パーソナルスタイリストの勉強は、当時、大阪に論理的思考でおしゃれを説く男性スタイリストがいらっしゃって、その方の元で学びました。
 服を選ぶ際に、目など顔のパーツの形やフェイスラインに合わせて選ぶという、体型よりも顔にフォーカスするメソッドが素晴らしいのです。
 私も、感覚でなんとなく服を選ぶのではなく、理論立ててコーディネートを構成していきたいと考えていたので、合っていると思いました。そのほかメンタリティやセクシャリティについても学びました。
 それから3年後の2017年、45歳の時に起業しました。

— 個人のお客様をスタイリングする際に大切にしていることは?

 私の場合はまず、最初にカウンセリングして、ファッションの悩みを聞き、内面にフォーカスします。人はなぜその服を選んで着ているのか? お話を聴くと実はコンプレックスが原因で何を着たらいいか悩んでいることがほとんどなのです。
 立派な方ほど悩みは深く、何を着たらいいか分からないとおっしゃることが多々あります。
 今まで服を褒められたことがないから、服に興味がない。何を着ても褒められないということは、きっと着る服と精神が似合ってなかったからなのです。周りはファッションのプロではないから、違和感しか感じないのです。私はそれを理論的に言葉にして、なぜ似合わないかをお伝えしています。そして、そこからデザインと質感が顔と馴染む服を選んでいきます。

— お客様は似合う服を着ることで、内面も変わっていきますか?

 実は私自身もファッションで悩んでいたのです。モデル時代はプロのスタイリストさんから、カッコいい服ばかり充てがわれたのですが、私もほかのモデルさんみたいに可愛い服が着たかった。その反動で、普段はフリフリの可愛い服を着ていました。その結果、カッコいいモデルとしての私のことを気に入ってくれた彼とのデートに可愛い服を着て行ったらすぐにフラれてしまったこともありました。
 私は他人に創られたカッコいいとか出来る女のイメージで、思い込まれて育てられ大人になって…。本当の自分は、甘えたいし、可愛いがられたかった。だからその反動で可愛い服が着たかったんですね。カッコいい服を着こなして、仕事が認められていても、心は置き去りにされたままだったのです。
 そういう方って多いんじゃないかと思うのです。なぜ、可愛い服が着たいのかということを紐解いた上で、理論的に、あなたにはなぜこの服が似合うのか?を説明してから服を着れば、メンタルも切り替わってスッキリするはずです。そうやってお客様には1年くらいかけて内面と向き合っていただいて、自尊心を育てて、魅力をアップしていくうちに、コンプレックスを取り除いていきます。

— メンタリティをケアした後、どのようにファッションスタイリングしていくのでしょうか?

 カウンセリングの後、実際にブティックでのショッピングに同行し、服をセレクトしていきます。そしてなぜこの服があなたに似合うのかを説明します。
 次に、その服を着回す方法を伝えるべく、5パターンくらいコーディネートを組んで、試着して、「この中からどれを着て出かけたいか?」を選んでいただきます。1軒の滞在時間は1時間半から2時間くらいかかりますね。
 また私が主宰する「プティポワおしゃれアカデミー」の講座では、毎年3月から12月までの期間に、おしゃれの基本からプロトコールマナーのほか、特別講師を迎えてセクシャリティやヘアメイクも学びます。毎回、フレンチのグランメゾンやカジュアルなレストランを会場にして、このお店だったら何を着る?というテーマを掲げ、座学の後にランチをします。昨年度のラストは、エノテーカピンキオーリの個室で行い、大好評でしたよ!

— ミッドランドスクエアには大人のためのブティックが揃っていますが、スタイリングに利用されますか?

 同行ショッピングするお店は、初回はショッピングモールからスタートします。ミッドランドスクエアは最上級の場所。ミッドランドスクエアでお買い物できるように頑張りましょうと目標にしています。上級者のお客様には、デザインワークス コンセプトストア、エポカ ザ ショップ、マルティニークをよく利用していますよ。
 ミッドランドスクエア各ショップには、お洋服だけでなくアクセサリーなどのファッション小物のセレクトも充実していますので、一つのお店でいくつものコーディネートが可能になります。
 私の年間スタイリングを卒業された方は自身でお買い物をされますが、「スタッフの皆さまと楽しくお買い物ができました!」と、嬉しいご報告も多くいただきます。
 また男女ともに楽しめるショップもありますので、パートナーと一緒にゆっくりとお買い物も叶います。このような優雅なひとときは、私がパーソナルスタイリストとして伝えたい豊かな時間でもあります。

— 顧客のほとんどが40代から60代のマダム世代ということですが、その世代もおしゃれに目覚めたり、マインドは変われるのでしょうか?

 変わるスピードは人それぞれですが、スタイリングしていくうちに、マインドが代わり、言動も変わってきます。今まで専業主婦で育児に専念していたり、仕事一筋でファッションに自信がなかったりした方々がみるみる変わっていきます。
 大人の女性は、たまにはファストファッションを取り入れるのもいいですが、上質なものを着てほしい。そして、新しいものにチャレンジもしてほしい!
 若い人はファッションに正解なんて求めなくていいし、たくさん失敗してその中で学んで行って欲しいですね。

— 今後の予定を教えてください。

 「プティポワおしゃれアカデミー」の講座はこの春、東京でも開講します。
 パーソナルスタイリストは、人生を幸せにするお仕事。本気でやっていけば社会貢献になります。いまは、私の周りの人しか幸せにできていないので、今後は、オリジナルメソッド「プティポワ美意識哲学®」を広めて、周りの人を幸せにするスタイリストさんを増やしていきたいです。
 また、春と秋には、私がアンバサダーをしている「インドゥエリス」のポップアップショップを開催していますので、顧客をお連れします。“上質を纏う幸せ”をテーマにした注目ブランドで素材もラインも素敵なのです。2022年3月にもポップアップを予定していますので、ぜひお運びください。

Profile

パーソナルスタイリスト
ビューティーモデリングディレクター
サロン・ド・プティポワ 代表

服部 ちづさん

Chidu Hattori

銀行員からファッションモデルに転身。27歳から名古屋市内のセレクトショップ店長としてバイヤーを経験。45歳でパーソナルスタイリストとして独立、起業。開講する「プティポワおしゃれアカデミー」では、女性たちを自立へと導く美意識哲学®講座やオンラインサロンで指導を行う。また、25年のファッションモデル経験から「魅せるウォーキング/ハイヒールウォーキング」を指導。2017年よりミス/ミセスコンテスト講師ビューティーキャンプウォーキングトレーナーに就任。ビューティーモデリングディレクターとしてミセスコンテストのプロデュースも手掛ける。

●サロン・ド・プティポワ
http://salondepetitspois.com

Information

服部ちづさんがアンバサダーを務める『インドゥエリス』ポップアップショップ開催
■期間:3月開催予定
■場所:商業棟2階イベントスペース