— お二人のふだんのお仕事は?

裕光:りんねしゃでは北海道に農場があって、原料の栽培収穫から製造販売まで一貫して手がけています。農業コンサルタントもやりますが、農場で生産もするし。一方でオーガニック系のフードコーディネイターとも言われますが、コーディネイションだけではなく販売もするし。全部自分でやらないと気が済まないんですよね。それで名刺が何種類もあるんですが、僕自身は「農業者」という肩書きが一番好きです。

うらら:住居に併設したカフェINUUNIQ VILLAGEの代表を務めています。「INUUNIQ」とはイヌイット語で「いのち」という意味。食べることを通して生命あふれる場でありたい、という願いをこめて名づけました。あえて「食育」と言うよりは、まずは自分たちが自然とともに暮らすことから外へ向けて発信していこうと。暮らしの場であるこの畑で穫れた野菜のおすそ分けが、朝市へつながっています。

— 甚目寺や東別院のオーガニックマーケット「暮らしの朝市」とは?

うらら:はじめは自分たちでつくった有機野菜を販売しようと思ったのがきっかけです。せっかくなら野菜だけでなく、パンや雑貨など手づくりの品を置いて、子どもからお年寄りまで地域の人が集まって交流できるマーケットにしようと。2011年にスタートした「甚目寺観音 暮らしの朝市」は、昔から楽市楽座が開かれていた毎月12日に約80店舗が集まります。2013年に誕生した「東別院 暮らしの朝市」は、親鸞聖人の命日にちなんで毎月28日に開催。約200店舗が軒を連ね、東海地区最大と言われるまでに発展しました。

— 2020年のコロナ禍、どのような変化がありましたか?

うらら:東別院はそれまで密が売りの朝市でしたから、しばらくは休止せざるを得ませんでした。でも立ち止まってばかりもいられないので、感染予防対策を徹底したうえで、複数日の縮小開催にしました。店舗調整が大変でしたが、8日はオーガニック系、18日は若手作家さん、28日は老舗のお店と、特色を持たせて密にならないよう分散して。月1回のお祭りから、月3回開催でいっそう暮らしに根づいた朝市になったと思います。

裕光:ステイホーム中は外出しなくて済み、最高でしたよ!屋外の畑仕事が良い息抜きになって。以前から「家畜以上ペット未満」の動物が生活空間に欲しかったのですが、ヤギ、羊、ガチョウ、鶏などを飼い始めました。ちょうど子どもたちも学校が休みになったので、動物小屋や柵を一緒に手づくりして、暮らしが豊かになりましたね。

コロナ禍で飼育を始めたガチョウと。うみたて卵を見せてもらうと鶏卵のおよそ2〜3個分の大きさ

— ミッドランドスクエアのマルシェはどんな品揃えですか?

裕光:「元気」「ビタミンたっぷり」といったキーワードに沿って、うちの農園からはサラダにぴったりのベビーリーフ、カラフル人参、エディブルフラワー(食べられる花)や、ミントティーなどを出品予定です。自然の素朴な香りは、都会人の日頃の疲れをほっと癒せると思います。

うらら:各地域で自然とともにサスティナブルな生活をしている仲間たちを、たくさん呼び集めました。キッシュ、焼き菓子、ジビエのソーセージ、甘夏ソーダなど、朝市でも特に人気のアイテムを選りすぐって。三重県のいなべから、岐阜県白川町から、愛知県美浜町から、豊橋や豊田の山間部から……その土地でとれたもの、その土地ならではの世界観も運んでくれます。

— 南側広場で2日間開催のミッドランド暮らしの青空市は?

うらら:ビタミンマルシェのような飲食アイテムに加えて、クラフト感のあるアクセサリーやバッグ、アロマなどの生活雑貨も登場します。

サスティナブル・ビタミンマルシェに出品予定のカラフル人参。サラダなどの生食がおすすめ

— ところでお二人にとって元気の源になるビタミンとは?

裕光:やっぱり子ども、家族ですかね。

うらら:それと私は朝市ですね。コロナで朝市が無くなったときは本当に気落ちしました。朝市って月に1回、みんなが集まるコミュニケーションの場。出店者さんにとっても商売3割、生きがい7割のような場だと思うんです。

裕光:朝市が何回か無くても、のんびりすればいいじゃない?と言ったんですけど、とにかくみんなが出会って交流することが大事なんだと。月に1回、自分たちがつくったものをお客さんに示す発表会のような場。自分の中から出てきたエネルギーが評価される、という喜びが朝市にはありますね。

— 最後にサスティナブル・ビタミンマルシェへ向けて意気込みを。

裕光:マルシェの醍醐味は「出会い」「交流」です。コロナ禍でネットショップも検討課題でしたが、やっぱり対面販売こそ原点で、そこにこだわっています。名駅という都会の真ん中で、僕らの農的暮らしや産物を知ってもらうきっかけになれば嬉しいですね。

うらら:出店者みんなが、いつもの場所を飛び出してひとつステップアップしたいと、ものすごく気合が入っています。丹精込めてつくった品々で元気をお届けしたいし、私たち自身も新しいチャレンジにわくわくしています。

晴天なら冬でもサンルームのように暖かいビニールハウスで、スタッフ(両端)とともに

Profile

株式会社りんねしゃ
専務取締役

飯尾 裕光さん

Hiromitsu Iio

1975年愛知県出身。三重大学生物資源学部博士課程で有機農業を専攻後、父親の経営する㈱りんねしゃ(1977年設立)の2代目として、自社製品の「菊花せんこう」の原料となる除虫菊の栽培などに取り組み、北海道に自社の農場も開く。SDGs(持続可能な開発目標)策定の前段階となるリオ+20(国連持続可能な開発会議)に日本を代表する農業者として招かれ提言を行なったほか、自立した食・農を提案し、自然と食卓をつなぐイベントやワークショップを運営。農業法人㈱みんパタProjectを設立し、CSA(地域支援型農業)専門家として研究所を立ち上げるなど多方面にて活躍中。

INUUNIQ VILLAGE代表

飯尾 うららさん

Urara Iio

2008年に飯尾裕光氏と結婚。2013年に津島市宇治町に店舗付き住宅を構え、「INUUNIQ VILLAGE」をオープン。カフェ経営と同時に、東海地区最大規模のマーケットとなる「東別院 暮らしの朝市」を運営するなど、関係者や地域の人々とのパイプ役として活動。3人の子育てに奮闘しながら、食・農・暮らしをテーマに自然に寄り添う生き方を提案している。